• 9月 1, 2026
  • 9月 2, 2026

10月1日から、クリニックでもカスハラ対策が義務になります

 2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が義務化されます。医療機関も例外ではありません。

病院もクリニックも対象

 労働施策総合推進法等の一部改正が行われ、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)を防止するための対策が事業主に義務付けられます。
 対象となるのは、労働者を1人でも雇用しているすべての事業主です。
 当然、病院もクリニックも対象となります。

義務化されたカスハラ対策とは?

「カスハラ対策といわれても、なにをすればいいのか……」と思うかもしれませんが、大きくは次の3つに分けて考えるとやりやすいと思います。

1 カスハラに対する方針を明確にして、周知・啓発する
2 相談窓口を明らかにする
3 事後に迅速かつ適切に対応する

 1つめは、「カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する」といった方針を明確化し、まずはスタッフ全員に伝えること。ホームページに掲載する、院内にポスターを掲示するといった「患者さんへの周知」も必要ですが、何より、「一人で抱え込まなくていい」「組織として守る」ということをスタッフに知ってもらうことが肝心です。

 2つめの相談窓口については、患者さんや家族などから迷惑行為を受けたときに誰に相談すればいいのかを、予め明らかにしておきます。小規模のクリニックの場合は、院長や外部の専門家などが窓口になると思いますが、「不在の場合にはまず誰に報告するのか」まで決めておきましょう。

 3つめの事後の対応は、カスハラが疑われる出来事があったらすぐに事実関係を確認し、被害者のケアを行い、再発防止策を検討するということです。

 その際は、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して、客観的な事実を確認すること。また、「怒った患者さんがドアを蹴り飛ばして壊れた」などの器物損壊であれば写真を撮る、「長時間の電話が繰り返される」などの業務妨害であれば通話を録音するなど、客観的な記録を残すことも大事です。

患者さんが激高している場合には……

 患者さんが激高している場合、できるだけ一人で対応しない、一人で対応させないようにしましょう。複数人で対応することで、暴力を抑止する効果があるほか、対応する側にも精神的に余裕が生まれます。
 また、場所を変えることで落ち着くこともあるため、状況に応じて、他の患者さんから離れた場所で話すことも有効です。その際は、職員が孤立しないよう複数人で対応し、万一のときにすぐ避難できるよう、出口を確保しておきましょう。防犯カメラが設置されている場所であれば、事実確認に役立つ場合もあります。

どこからがカスハラ?

 職員をカスハラから守ることは大切な一方で、正当な意見・クレームまで“カスハラ”にしてしまうと、患者さんとの関係が悪化します。
 カスハラの定義は、「顧客等の言動で」、「社会通念上許容される範囲を超えたものにより」、「労働者の就業環境が害されるもの」です。

 暴行、脅迫、暴言、名誉棄損などのほか、威圧的な言動や不退去や居座り、土下座の強要、継続的・執拗な言動なども含まれます。

 ただし、カスハラにあたる迷惑行為でも、その原因は患者側だけではなく、医療側の不備もある場合もあるので、再発防止策を考えるときには、クリニックの環境やシステムに原因はなかったかも含めて検討することは大事です。

応召義務との関係は?

 医療現場の場合、迷惑行為を行う人がいても「患者である」ために、サービスの提供を断りづらいという面があります。たしかに、厚生労働省の指針でも、サービスの中断が顧客等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合があることに留意して適切に対応するよう求めています。

 しかし、治療中だからといって、医療者側が相手の迷惑行為をがまんしなければいけないということではありません。「応召義務があるから断れない」と考える方も少なくありませんが、一概にそうではありません。

 令和元年12月25日付の医政局長通知「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」には、患者の迷惑行為について次のような考え方が示されています。

「診療・療養等において生じた又は生じている迷惑行為の態様に照らし、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合(※)には、新たな診療を行わないことが正当化される。
※ 診療内容そのものと関係ないクレーム等を繰り返し続ける等。」

 つまり、患者による迷惑行為によって診療の基礎となる信頼関係が失われている場合には、新たな診療を行わないことが正当化されるということです。

雇用主には職員を守る義務がある

 愛知県医労連が、2025年12月から2026年1月にかけて、医療・介護・福祉職を対象に実施したアンケート結果では、仕事を辞めたいと思う理由の1位が「カスハラを含む患者・家族からのクレーム」でした。

 カスハラ事案が起こったときに職員を守り、その後も不安なく働けるようケアすること、そして、起こった事案を分析して再発防止策を講じることは、職員の退職を防ぐことにもつながります。 

 また、忘れてはならないのは、雇用主には「安全配慮義務」があるということ。病院やクリニックは、その医療機関で働く人たちの使用者として、職員の生命や身体等に危険が及ばないように安全を確保し、必要な配慮をする義務を負っています。
 10月からのカスハラ対策義務化を機に、職員が安全に安心して働ける環境が整えられているか、職員の方たちも交えて話し合ってみてはいかがでしょうか。

◎参考

厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf

厚生労働省「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html

厚生労働省YouTube「医療現場における暴力・ハラスメント対策」

厚生労働省医政局長「応召義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」
 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf

愛知県医療介護福祉労働組合連合会「『仕事辞めたい』看護職が74.4%」
 http://www.aichi-irouren.jp/wp-content/uploads/2026/04/b3c1d39ba780ab897ceac6fe87a1b55f.pdf

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