- 6月 1, 2026
- 6月 4, 2026
政府が進める「攻めの予防医療」とは何か
「攻めの予防医療」とは
「攻めの予防医療」は、「健康寿命の延伸を図り、皆が元気に活躍し、社会保障の担い手になっていただけるように、予防に努め、疾病を発見し、早期に適切な機関等につなげること」。政府与党が推進している政策の一つです。
昨年10月、高市首相は、内閣総理大臣に就任した際の所信表明演説で「『攻めの予防医療』を徹底し、健康寿命の延伸を図り、皆が元気に活躍し、社会保障の担い手となっていただけるように取り組みます」と語りました。
また、今年2月の衆議院選挙後の施政方針演説でも、高市首相は次のように、「攻めの予防医療」に取り組む考えを述べています。
「データヘルスや保険者機能の強化、健康経営に取り組む地域企業への支援、がん検診・歯科健診の推進を通じ、『攻めの予防医療』を具体化させます。健康寿命の延伸を図ることで、皆が元気に活躍し、社会保障制度を含めた社会の支え手となっていただけるようにします。」
つまり、予防医療に積極的に取り組むことで国民の健康寿命を延ばし、社会保障の担い手を増やそうという考えです。
なぜ今、「攻めの予防医療」なのか?
なぜ今、「攻めの予防医療」が必要とされているのでしょうか。
それは人口減少と少子高齢化が同時に進み、働き手は減る一方で、超高齢化、さらには高齢者の高齢化も進み、医療や介護のニーズは増していることが背景にあります。
また、内閣府の「令和6年版 男女共同参画白書」によると、健康上の問題で仕事、家事等への影響のある人は621万人に上ります。その6割以上を占めるのが女性です。
その一因として、男女の健康課題の違いがあります。男性特有の病気(前立腺肥大や前立腺がんなど)は50代以降に多くなる傾向がある一方、女性特有の病気は(月経障害や女性不妊症は20代~40代前半、子宮内膜症や子宮筋腫は30~40代、乳がんや更年期障害は40~50代など)働く世代に多いのです。
経済産業省が2024年2月に発表した資料では、女性特有の健康課題による労働損失等は、社会全体で年間約3.4兆円に上ると推計されています。一方、男性特有の健康課題による経済損失は約1.3兆円と試算されるそうです。

国にとって、働き手の健康を維持すること、健康寿命を延ばし社会保障の支え手となってもらう期間を延ばすことは、社会保障を持続可能なものとするためにも喫緊の課題です。
「性差ヘルスケア副大臣等会議」のとりまとめ
昨年12月には、内閣官房で「攻めの予防医療に向けた性差に由来するヘルスケアに関する副大臣等会議」が設けられ、5回にわたって繰り広げられた議論の取りまとめが、今年5月25日に行われました。
論点として提示されたのは、次の3つです。
①性差に由来する健康課題に対応する医療の推進
→更年期世代の女性を診療する一般診療医向けのガイダンスの作成、更年期世代の女性の健康課題に対応できる医療機関の見える化、円滑な受診につながるツールの作成など
②ライフステージに応じた性差に由来する健康課題への対応の推進
→プレコンセプションケア(妊娠前の健康づくり)の推進、職場における専門医への受診勧奨等、科学的根拠に基づく予防・治療法の高度化など
③企業・保険者等における対応の推進
→データヘルスを活用した予防医療モデルの構築を進め成果を出す保険者インセンティブのあり方の検討、中小企業の健康経営推進に向けた自治体・経営支援機関と地域の健康づくり支援機関の連携、エビデンスに基づくヘルスケアサービスの開発支援など
「攻めの予防医療」の6つの領域
さらに5月22日に開かれた経済財政諮問会議では、上野賢一郎厚生労働大臣から、「攻めの予防医療」の推進に向けて、厚労省として総合的な対策を取りまとめる考えが示されました。
この日提出された資料では、「攻めの予防医療」として、栄養・食生活、がん・循環器病等、歯科保健、認知症、リハビリテーション、性差に由来するヘルスケアという6つの領域が示されています。

「持続可能な社会保障制度の構築に向けて(上野臨時議員提出資料)」
「攻めの予防医療」で医療機関に求められる役割は
攻めの予防医療は、病気の予防や早期発見、重症化予防によって健康寿命を延ばそうという取り組みです。
今後、厚労省がとりまとめる予定の「攻めの予防医療を推進する総合対策」では、栄養・食生活、がん・循環器病等、歯科保健、認知症、リハビリテーション、性差に由来するヘルスケアなどの領域における具体的な施策が示される見通しです。
医療機関においても、治療のみならず、健診後のフォローアップや重症化予防、性差・ライフステージに応じた健康支援などを通じて、地域住民の健康寿命の延伸を支える役割が一層重要になるでしょう。また、福祉施設の嘱託医や学校医、産業医といった業務を通じて「攻めの予防医療」に積極的にかかわることも大切な役割です。
「攻めの予防医療」は、健康寿命の延伸を通じて社会の活力を維持しようとする取り組みでもあります。医療機関には、診療の場だけでなく、地域や職域を含めたさまざまな場面で住民の健康を支える役割が期待されています。その具体化に向けた今後の動向が注目されます。
◎参考
・内閣府「令和6年版 男女共同参画白書」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r06/zentai/pdfban.html
・経済産業省ヘルスケア産業課「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」
・令和8年第7回経済財政諮問会議資料
「持続可能な社会保障制度の構築に向けて(上野臨時議員提出資料)」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2026/0522agenda.html