- 11月 1, 2026
- 11月 2, 2026
医療機関のSNS投稿トラブル、クリニックが備えておきたい対策
医療機関の職員によるSNS投稿が拡散し、問題となる事例が相次いでいます。悪意のない投稿でも、撮影場所や共有方法によっては、患者さんのプライバシーや医療機関の信用を損なうおそれがあります。トラブルを防ぐために、クリニックが整えておきたいルールと対応策を考えます。
相次ぐ医療機関職員のSNS投稿問題
今年10月には、千葉県内の病院で、看護師が夜勤中にベッドに横たわる入院患者さんを無断で撮影する事例がありました。院内の様子を自撮りした動画には、「まじ暇」「つまんねえ」といったテロップが付けられ、SNSに投稿されました。3人の看護師だけが参加するグループ内で共有していたつもりが、X上に転載され、拡散。多くのメディアで報じられました。
同院のホームページにおける「お詫び」文によると、3人の職員には「不特定多数のSNSへの拡散をしたとの自覚はなく」、どういった経緯でXに転載されたのかは不明です。
また、今年4月には、埼玉県の病院の職員が院内で撮影した写真を個人のSNSに投稿。それが別のSNSにも転載されて拡散され、多くの批判を呼びました。拡散された画像には、「CCU」と書かれた医療用ワゴンの上にケーキを並べてスタッフが飲食している姿や、缶飲料を手にポーズをとる様子などが含まれていました。
SNSのリスクは「不適切な投稿」だけではない
千葉の病院の事例では、職員はグループ内で共有するつもりだったにもかかわらず、動画がXに転載され、拡散しました。
公開範囲を限定したつもりでも、共有した画像や動画が、その後、どのように扱われるかを完全にコントロールすることはできません。スクリーンショットや転載などで、意図せず拡散してしまうリスクはゼロではありません。今回の事例では、動画がXに転載された経緯は明らかになっていませんが、限られた相手との共有であっても、意図しない形で情報が広がるリスクがあることを示唆しています。
また、埼玉の病院の事例で問題になった投稿は、一見、同僚の誕生日を祝う、和やかな職場の一場面にも見えます。しかし、写真には「CCU」と書かれた医療用ワゴンなどが写っていました。医療機関では、職場の雰囲気を伝えるつもりの何気ない写真であっても、撮影した場所や周囲の状況によって、患者さんや家族、地域の人々に与える印象が大きく変わります。悪意のない投稿であっても、医療現場にふさわしい行動だったのかという観点から問題視されることがあるのです。
SNS投稿が招く信用低下と法的リスク
前述の2つの事例もそうですが、職員が個人のSNSに投稿したものであっても、最終的に拡散されてしまうと、医療機関の名前が表に出るため、その病院・クリニックの信用低下につながります。
また、投稿した写真や動画に患者さんの個人情報が含まれていたり、患者さんの病状や来院事実が特定できる情報を公開したりすれば、プライバシーの侵害や個人情報保護法上の問題につながる可能性があります。事案によっては、個人情報保護委員会への報告や本人への通知が必要になるほか、損害賠償請求などに発展するリスクもあります。
クリニックで決めておきたいルール
職員に悪気がなくてもSNS投稿が炎上してしまうリスクはあります。事前に防ぐには、クリニックとしてルールを決めておきましょう。
まず、院内での写真・動画撮影のルールを決めましょう。診察室・処置室・受付は撮影禁止など、“撮影禁止エリア”を明確にしておきます。休憩室などのバックヤードでも、シフト表や予定が記入されたカレンダーなど、撮影・公開してはいけない情報が写り込まないよう注意が必要です。
業務中の私用スマホの持ち込みや利用についても、ルールを決めておきましょう。例えば、勤務中は原則として私用スマホを使用しない、使用する場合は休憩時間に限るなど、基本的なルールを明確にします。
ただし、子育てや介護をしている職員もいるでしょうし、家族の体調不良などで、勤務中に連絡を受ける必要がある場合もあります。緊急時にはクリニックに連絡してもらう、事前に事情を申し出た職員には例外的に使用を認めるなど、個々の事情に応じた柔軟な対応も必要です。
また、問題のある投稿を発見したときの対応についても、あらかじめ決めておきましょう。患者さんの個人情報や診療情報が含まれている場合は、情報漏えいの可能性を踏まえ、速やかに事実確認を行い、投稿の削除や関係者への対応を検討する必要があります。
一方、職場への不満や個人的な意見の投稿については、内容や経緯を確認せず、一律に問題視することは避けたいところです。職員が迷ったときや、問題のある投稿を見つけたときに相談できる窓口を設け、対応方法を共有しておくとよいでしょう。
ルールをつくるだけで終わらせない
職員に対して、プライベートでのSNS利用を止めることはできません。
そこで、普段からどういった投稿が問題になり、どういった投稿であれば問題にならないのか、判断基準を共有しておくことも大切です。たとえば、他の医療機関においてSNS投稿の問題が起きたときなどは、職員の意見を聞き、クリニックとしての考えを伝えるよい機会です。
また、業務や職場への不満がSNSへの不適切な投稿につながることもあります。日頃から職員の声に耳を傾け、働きやすい職場づくりに取り組むことも大切です。